名作「模倣犯」に続く前畑滋子シリーズ。5年ぶりの宮部。
小説を読むときだけは文章そのものを楽しむために努めてゆっくりと舐めるように読むのだがそれでも上下巻を4時間弱で読了。著者のぐいぐい読ませる技術と性格描写は健在。「模倣犯」のエピソードがそこかしこで振り返られていて猟奇連続殺人描写に夜中慄然とした当時を回想す。冒頭ですでに死んでいる少年の残したものがその後の関係者たちの過去の人生を掘り返していくスピード感。嗚呼読書の快楽也。挿話される「断章」は本編とは無関係につづられ上巻ではまったくリンクしないのだが展開が進むにつれ絶妙な連携を見せる。そうかそうきたか。老人作家みたいに無理して作品に押し出すでもなく、自然にネットの存在と効用を織り込む巧みさはネトゲ中毒の宮部ならではか。
と思ったらamazonのレビューでは辛口意見も多い。いろいろな伏線を回収してないし、後半少し急ぎすぎてるし(オチがわりと早めにわかる)、超能力と社会犯罪をリンクさせる設定にやや強引感もあるのでこれはやむなしか。前畑滋子はもうなんか宮部の語り部となっていて、相当このキャラクターに入れ込んでるのだなと思わせるが取材の秘密を旦那にべらべらしゃべってはいかんよ。あと飲酒運転はいかんだろww
こんな消化不良感を割り引いても面白い。ともあれ「模倣犯」の続きというだけでもファンには応えられない一品で表題に由来するラストの一説には唸らされ泣いた。まあ読んでください。
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