原価計算の仕組みを人に伝えるのは難しい。この本を読んでいてなおさらその難しさを実感した。
もはやはるか記憶の彼方にある(旧)公認会計士試験の試験科目のなかでも原価計算は大の苦手(私が受験した年の出題は地雷問題でもあったので軽くトラウマ)だった自分からみても、原価計算の難しさは独特だ。最近では定期的に教壇に立って社会人向けに原価計算を教えているのだけど、この内容になると受講生のポカーン比率が格段にあがりますかそうですか。なにが難しいかというと、以下に挙げるような「原価計算」の知識体系に固有のハードルがあることによる。
1. 用語がいたずらにややこしい
「労務費」「製造間接費」「配賦」「製造指図書」「期末仕掛品」。簿記3級レベルの知識からだと人類はこれらの用語に違和感を覚え、そしてめまいを覚え高熱を出して寝込みさらに子を産み育てそして死んでいった(cv永井一郎)。日本語の勘定科目表記が独特というのもあるけど、この壁を超えないと話がはじまらないのは酷である。
2. 全体の体系がイメージしにくい
いうまでもなく「原価計算」は、モノやサービスの「原価」をその投入から生産までの一連の過程を通じて集計し、貨幣単位に落とし込んでいくプロセスだ。財務会計の体系のなかでは「費目別計算」「部門別計算」「製品別計算」の3つのステップでそのプロセスを進めていく。これはどの教科書でもそのとおり。だが順序立てて理解しているつもりでもあれいまどこだっけきょろきょろと迷いやすいのが原価計算の体系。一枚でわかる原価計算の心得とかそういうのがあればいいけどなかなか作りにくいし理解しにくい。本書でも多くの図表を駆使してわかりやすい解説を試みているが、全体像を理解するのには一定の忍耐が必要だ。
3. 数字を仕上げる達成感が乏しい
原価計算のゴールは「単位あたりの製品原価(一個あたりいくらか)を求めること」なのだが、膨大な計算プロセスを追いかける過程でそのゴールは意識の外に追いやられひたすら価格と数量の計算式に悩まされしまいにはめまいを覚え高熱を出て寝込みさらに(ry)ということで、簿記会計のように「貸借合ったー」「原価率出たー」の達成感に比べると、単位あたり製品原価が計算できたときの達成感は少々微妙である。この暗い道を抜けると原価計算のおもしろさに開眼するという神展開もあろうが、多くは脱落しがちだし私も開眼しませんでしたすみません。
そんな固有のハードルを乗り越えるマテリアルとして本書は最適な一冊だ。著者はIFRS関連の著作やブログのほうが有名だけど、原価計算についても深い知識とわかりやすい伝え方で読者の精神的なつまづきを最小限に抑えるよう最大限に工夫している。
以下は目次の引用。
1. 用語がいたずらにややこしい
「労務費」「製造間接費」「配賦」「製造指図書」「期末仕掛品」。簿記3級レベルの知識からだと人類はこれらの用語に違和感を覚え、そしてめまいを覚え高熱を出して寝込みさらに子を産み育てそして死んでいった(cv永井一郎)。日本語の勘定科目表記が独特というのもあるけど、この壁を超えないと話がはじまらないのは酷である。
2. 全体の体系がイメージしにくい
いうまでもなく「原価計算」は、モノやサービスの「原価」をその投入から生産までの一連の過程を通じて集計し、貨幣単位に落とし込んでいくプロセスだ。財務会計の体系のなかでは「費目別計算」「部門別計算」「製品別計算」の3つのステップでそのプロセスを進めていく。これはどの教科書でもそのとおり。だが順序立てて理解しているつもりでもあれいまどこだっけきょろきょろと迷いやすいのが原価計算の体系。一枚でわかる原価計算の心得とかそういうのがあればいいけどなかなか作りにくいし理解しにくい。本書でも多くの図表を駆使してわかりやすい解説を試みているが、全体像を理解するのには一定の忍耐が必要だ。
3. 数字を仕上げる達成感が乏しい
原価計算のゴールは「単位あたりの製品原価(一個あたりいくらか)を求めること」なのだが、膨大な計算プロセスを追いかける過程でそのゴールは意識の外に追いやられひたすら価格と数量の計算式に悩まされしまいにはめまいを覚え高熱を出て寝込みさらに(ry)ということで、簿記会計のように「貸借合ったー」「原価率出たー」の達成感に比べると、単位あたり製品原価が計算できたときの達成感は少々微妙である。この暗い道を抜けると原価計算のおもしろさに開眼するという神展開もあろうが、多くは脱落しがちだし私も開眼しませんでしたすみません。
そんな固有のハードルを乗り越えるマテリアルとして本書は最適な一冊だ。著者はIFRS関連の著作やブログのほうが有名だけど、原価計算についても深い知識とわかりやすい伝え方で読者の精神的なつまづきを最小限に抑えるよう最大限に工夫している。
以下は目次の引用。
第1章 原価計算とは何をするものなのか
第2章 原価を分類してみえるもの
第3章 製品別計算のキホン
第4章 個別原価計算の手順と計算のポイント
第5章 総合原価計算は大量生産のときに使う
第6章 原価計算の結果を記帳する
第7章 標準原価計算と原価管理の考え方
第8章 直接原価計算と利益計画
第9章 伝統的な原価計算の問題点を解決する
第1章から第7章までは伝統的な原価計算を教科書どおりに順序立てて説明している。第9章はABCやTOCなどの最近のトピックについて軽く触れられていて、初心者にはとっつきやすい。初学者はむしろ第9章から読んで第1章に戻ったほうが挫折しにくいかも。
ともあれ「原価計算」という財務会計領域の知識体系のなかでも独特のディープなかほりと濃い味付けの世界に、語り口はやや薄味に工夫した本書をきっかけに踏み入れてみてはいかがだろうか。なにごとも食わず嫌いはよくないからね。
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