高い完成度と評判のクラウド会計サービスfreeeを食べてみたよ
高い完成度と評判のクラウド会計サービスfreeeを食べてみたよ(個人事業主編)
の続き。freeeは筋のいいサービスという結論なのだけど、このサービスに限らずクラウド型の会計サービスがどのあたりをターゲットにしているのかぼんやり考察してみる。
「個人」
「法人」
に分ける。ここで個人とは字義通りの個人事業主のことで、法人とは経理専門要員がアサインできない小規模法人のこと。経理要員がいたり一定規模以上になってしまうとサービススペックが合わない気がするのでいったん外しておく。
次に、処理頻度については仕訳処理件数の規模で分類してもよいのだけどざっくりと
「年次入力」
(申告期限間際になったらまとめて入力、決算書と申告書ができれば余計な作業は不要)
「月次入力」
(毎月の損益推移は試算表レベルで把握したいので簡易な月次処理を行う)
の二分類で。
これらを組み合わせると大きく四つの層が考えられそう。
A層「年次入力の個人」(ものぐさ事業主)
B層「年次入力の法人」(ものぐさ零細法人)
C層「月次入力の個人」(きちんと事業主さん)
D層「月次入力の法人」(法人きちんとさん)
これらの層ごとにクラウド会計サービスを導入すべきなのかを検討する。ユーザー自身と支援する会計事務所の両面から考えるとこんな感じだろうか。パッケージソフトは多種多様の製品があれど、わかりやすく弥生としておく。
ものぐさ事業主は...
(ユーザーとして)
迷わず導入。パッケージとかクラウドとか気にすんな。ちゃちゃっと入力して決算書作ってe-Taxの画面から申告書作っておしまい。他にやることもないしこまけえことはいいんだよ(AA略)。
(会計事務所として)
基本は薄利多売なので手間がかからないに越したことはない。お客様自身でクラウドでもなんでもどんどんやってください。青色決算書持ってきてくれれば申告書ぐらいは作ります。
ものぐさ零細法人は...
(ユーザーとして)
使う銀行口座にもよるが導入して損はなし。でも事業規模がこれから拡大していくことを考えるとクラウドでもいいけどあまり冒険せず弥生とかのほうがいいかもめ。
(会計事務所として)
こちらも薄利多売だけどお客様自身で入力してくれるのであればそれはそれでありがたい。でも今後のことを考えると弥生とかのほうが助かるのでできれば購入してください。
きちんと事業主さんは...
(ユーザーとして)
基本は意識高い。作業が平準化するので決算間際に慌てることはなさそう。クラウド会計サービスで毎月のサマリー情報を活用できれば導入メリットがあるかも。
(会計事務所として)
お客様が眩しすぎて直視できない。でも基本は薄利多売なので(ry)あとはA層と同じ。
法人きちんとさんは...
(ユーザーとして)
クラウドにするか弥生にするかの境界線。特殊な取引や給与計算、銀行取引明細にどこまで対応できるか。慣れてしまえばクラウドでも問題なさそう。でも弥生は機能豊富だしちょっと見劣りするか。
(会計事務所として)
クラウドサービスに追随できてない会計事務所はいやがりそう。お客様うちは弥生なんでよろしく。仕訳も多そうだしソフトも安定してるし安心ですよ。的な。
これら俯瞰してユーザーの立場から見ると
A層=B層>C層>D層
の順序でクラウド会計サービスを導入するインセンティブが出てくる。これは会計事務所の立場からみても対応が楽な(つまり儲からない)順番になるので、A層かB層から普及していくのが普通に想像できる。逆に規模拡大や事務負荷があがるほどクラウドサービスでカバーしきれない複雑な仕訳要件が出てくる(つまり会計事務所の出番が増える)ことで、徐々に既存のパッケージソフトと競合する局面が出てくる、すなわち機能面で対抗しなければならなさそうと考えられそうだ。
クラウド会計サービスは結局のところ、
・会計事務所などにコストをかけられない個人事業主や小規模法人にとってコスパの高いサービスになる
・規模が拡大するにつれて会計事務所等が提供するサービスともバッティングし、コスパも下がる
・会計事務所が対応する事業規模はパッケージソフト主流の(かなり保守的な)マーケットなので、クラウドサービスで対抗するには機能面で対抗するのが必須
という感じか。会計事務所サービスとバッティングする状況でどう折り合いをつけることになるのかは判断保留で。
事業規模が拡大することによるクラウド会計サービスのネックとなる対応ポイントは、ざっくり考えると
・インターネットバンキングの認証(銀行側でいたずらに認証を複雑化してしまったために取引明細データを連携しにくい不満を解消)
・給与計算(額面と控除だけでなく社会保険料や源泉所得税の計算もきっちりして給与計算のストレスを解消)
あたりか。クラウド会計サービスの次の戦場は
「ネットバンキングのアグリゲーション」
「クラウド給与計算」
あたりになるのでありましょうか。
こちらからは以上です。
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